ガードマン

狭い世界の、よく知らない人の話。


専門学校の自習室で勉強していると、ある時間に必ず、誰かがドアを開けて自習室の中をのぞき込み、何かを探すように眺め回したあと、ドアを閉めて去っていく。


多分、勉強仲間が来てるかどうか探しているんだろうと思っていた。
いつも同じような時間なのは、几帳面な性格で、休憩時間をそろえてあるんだろうと。


しかし、喫煙所における先輩後輩との会話の中で、自分が認識していたのは、その人の行動の一部分であり、真相はどうやら違うらしいということがわかった。

・その人はいつも決まった時間に自習室のドアを開けて回る。
・すべての自習室のドアを開けて回る。
・たまに自習室じゃないところも突破しようとしている。
・その人が誰かとしゃべっているのを見た人はいない。したがって、友達を探しているわけではない様子。
・自習室を開けて回った後は、学校の外に出て、どこか散歩したあと帰ってくる。


決まった時間に、すべての部屋を調べて歩き、周囲を巡回して帰ってくる、その人。

僕らの間でその人は、「ガードマン」と呼ばれている。