モンドヴィーノ

課題図書、「モンドヴィーノ」を見た。

ワインの生産者、批評家、マーケティング、コンサルタント、近代史、ライフスタイルの話なんだけど、ワインに興味のない人にもオススメのドキュメンタリー。

ワインって、言ってももとはぶどうだし、ぶどうのできや味がもろ反映される飲み物だから、言えば、酒と言うよりは、むしろ、農作物。

よりおいしいワインを造ろうとしたら、誰もがすぐに飲んでわかるワインになる。
タンニンの渋みの角が丸くなるように、人間の手を加え、ぶどうの木に肥料を加え、樽を新樽を使いetc...とにかくたくさん人間の手が加えられる。

一方、ワインは、宗教や伝統と切り離せない特殊な飲み物だ。

フランスの醸造家のおじいちゃんは話の中に「ローマ時代」という話をぽろっと織り交ぜてくる。

ワインは人の手がかかりすぎてる。本当のワインはそんなんじゃない。その土地土地の、土の味「テロワール」が大事なんだ、と。

ロバート・パーカーというアメリカ人は、ワインに点をつける人だ。彼が高い点をつけるワインは、市場では高い値がつき、マゾっ気丸出しのワイン狂がこぞって、そのワインを求める。

味なんて、人それぞれの評価なのに、わざわざ点をつけるあたりが、アメリカ人らしい。ロバート・パーカーに高い点をつけてもらうために、コンサルタントを雇ったり、果汁を濃縮するとか、色を濃くつけるとか、オーク樽のにおいにするとか、自然ではない方法で彼に気に入られるようにする生産者もいるそう。

全部見終わって。

誰も悪くない。どの立場に立つかによって、どうにでも見方は変わる。それはこのドキュメンタリーを見ていると、コロコロと、登場人物につける「心の設定」の色は変わるからだ。

変わらないこと。ワインは、ワイン。そのワインに魂があるかないか問わず、ね。

そして、このドキュメンタリー、犬がたくさん出てくる。
犬はどこに行っても犬なんだ。妙に安心した。
野良同然のルーサー・キングという黒い犬も、愛されている。

気に入ったサルデーニャ島のおじいちゃん醸造家の言葉。
「我々には千年の歴史がある。我々は誇りを持って生きていたのに、なぜ今、誇りがもてなくなった?なぜなら、現代の人間は、進歩という幽霊に惑わされているからだ。幽霊から人間を守らなければ。自然を守らなければ。そして、他人を苦しめないようにしなければ。」