クサマンとクサマンファンの子ら

帰りに利用する最寄りの駅には、一人のルンペンさんがいる。ほかにもいるのかもしれないけど、俺がよく見るのはその人、一人。俺的あだ名は、クサマンさん。

クサマンさんは、とてもくさい。あとから強烈にくるタイプ。登場したときはそんなでもないが、去っていた後ですごい匂いが残る。
俺が改札をくぐる前、ベンチで電車を待っている間に、西口の方からもったりと現れて、待合室に入る。クサマンさんの匂いは強烈なので、我慢できない人はパラパラとタイミングを見計らって待合室をあとにする。待合室に残った人は、出たいのに、出たらクサマンさんが傷つくかな、という顔をする。

しばらくすると、クサマンさんは待合室を出て、やってきた方向と逆の方向に出ていく。

あとには強烈な匂いだけが残る。

クサマンさんは時計もないのに、いつも同じような時間に待合室に現れて、待合室を去っていく。ビニール袋を持ってる日もあれば、ワンカップを持ってる日もある。

そんなクサマンさんには女の子二人組のファンがいる。本人たちは自分たちのことをそんな風には思ってないだろうが。
クサマンさんが現れる時間に、同じく現れて、クサマンさんを見つけてはギャーギャー言っている。クサマンさんと待合室に入っている人たちを「マジあり得ない!」と嘲笑し、待合室の写真を撮る。
待合室から出てきたクサマンさんを間をあけて追いかけ、「まじくせー!」とクサマンさんの強烈な匂いに爆笑している。嬉しそうだ。

ちなみにクサマンさんはきれいな女の子が好きで、駅のベンチにいる女の子によく声をかける。でも、クサマンさんファンの子らはシカトされている。ファンの子らはそんな風には思ってないだろうが。

ところでクサマンさんを見て思うのは、東京のルンペンさんたちとは感じが違うなあということだ。東京のルンペンさんたちは、働いたり、自分の趣味があったりするせいか、生きてる感じがする。
クサマンさんはじめ鹿児島のルンペンさんたちはなんだか仙人みたいだ。世を捨てて、超越しちゃったかなんかで、人ではないなにかになった感じがする。